撮ったのに出さない動画が7割。止めているのは撮影より「出す基準」

撮ったのに出さない動画が7割。止めているのは撮影より「出す基準」

海外の調査で、小さな会社の経営者の7割が「撮ったのに出していない動画」を持っていると分かりました。止まっている理由は撮影ではなく出す判断。AIを使って出す前の不安を減らし、公開まで進める方法を書きます。

もしあなたが、スマホのカメラロールに「撮ったけど出していない動画」を持っているなら。

撮った直後は「よし、これを出そう」と思っていた。
でも見返したら、顔が硬い。言い間違いもある。背景も散らかっている、、、
そのまま1週間、1か月と経って、気づけば何本も溜まっている。

そういう感覚があるなら、この記事は役に立つと思います。

実はこれ、あなただけの話ではないんです。
最近、海外でこの状態をそのまま数字にした調査が出ました。
読んだとき、思わず「やっぱりそうか」と声が出ました(笑)

「撮ったのに出していない」が7割という調査

まず、何が出てきたのかを共有させてください。

AI動画のサービスを提供している米国のHeyGenという会社が、2026年9月に調査結果を発表しました(出典: HeyGen プレスリリース・2026年9月/AI Frontier Review・2026年10月)。

対象は、従業員100人未満の会社の経営者や個人事業主、1,000人以上。40か国以上の人が答えています。

この調査では、71.6%が「会社のための動画を撮ったのに、出さないと決めたことがある」と答えました。

同じ調査では、69.3%が「動画を出すことはブランドづくりや仕事の獲得に役立つ」とも答えています。

つまり、動画が大事なことは分かっている。撮るところまでもやっている。
なのに、最後の一歩で止まっている人が大半、ということなんです。

ひとつ、大事な注意があります。
この調査は、HeyGenのサービスを使っている人に聞いたもので、本人の自己申告です。発表した会社自身も「小さな会社全体の姿ではない」と書いています。
なので、この調査の7割という数字そのものより「撮ったのに出さない、が珍しくない」という傾向として受け取るのがちょうどいいと思います。

あれ? 止まっているのは「撮る」ではなく「出す」

私はこの数字を見て、「あれ?」と思いました。

動画が出せない理由というと、多くの人は「撮る時間がない」「撮り方が分からない」と考えますよね。
だから、機材を揃えたり、撮影のコツを調べたりする。

でも、この調査が示しているのは、撮影はもう終わっているということです。
止まっているのは、撮ったあと。「これを出していいのか」を決める場面なんです。

これ、メールの下書きとまったく同じ構図じゃないでしょうか。

書くのは書いた。でも、送信ボタンの前で「この言い方で失礼じゃないかな」「もう少し整えてから」と迷う。
そのまま下書きフォルダに残って、送るタイミングを逃す。

下書きが溜まる原因は、文章力ではないですよね。
「どこまで整ったら送っていいか」という基準が、自分の中にないからです。

動画も同じだと思います。
撮る力が足りないのではなく、出す基準が決まっていない。
だから毎回、見返すたびにゼロから迷ってしまうんです。

動画は「作品」ではなく「手紙」と考える

では、どう考えたらいいのでしょうか?

私は、会社の動画を「作品」ではなく「手紙」だと捉えるのがいいと思っています。

作品なら、完成度が問われます。顔の表情も、言い回しも、背景も、気になって当然です。
でも手紙なら、いちばん大事なのは「相手に用件が伝わるか」ですよね。
字が多少くせ字でも、相手は気にしません。

そう考えると、出す基準はぐっとシンプルになります。
たとえば、次の3つだけを確認する。

  • 最初の数秒で、誰に向けた話か分かるか
  • 伝えたいことが1つに絞れているか
  • 事実の間違いや、言ってはいけないことが入っていないか

この3つを満たしていたら出す。
表情の硬さや、少しの言い間違いは、基準に入れない。

基準を先に決めておくと、見返したときに迷う場面が減ります。
「顔が硬いな、、、」と思っても、それは基準の外。だから出していい、と判断できるんです。

AIの使いどころは「出す前の不安」を減らすこと

ここで、AIの出番です。

海外の報道では、HeyGenはこの調査を、AIで作った分身(アバター)や、本人の声を再現する機能と合わせて発表しています。カメラの前に立つ負担をAIが肩代わりする、という提案です。

それも一つの選択肢だと思います。
ただ、同じ調査で、アバターを使っていない人がいちばん心配していることは「作り物っぽく見えること」(50.7%)でした。
お客さんとの信頼が大事な小さな会社ほど、ここは慎重になっていいところです。

私がおすすめしたいのは、もっと手前の使い方です。
撮った本人の動画はそのまま使う。そのうえで、出す前に引っかかる不安を、AIに一つずつ片づけてもらう。

たとえば、こんな使い方です。

① 何を言ったかを文字にする
動画を文字起こしして、ChatGPTやClaudeに渡します。
「この話で伝えたいことを1行にしてください」と頼むと、自分が何を言ったのかを冷静に確認できます。
伝えたいことが1行にならなければ、そこで初めて撮り直しを考えればいいんです。

② 事実の間違いを探してもらう
文字起こしを渡して「言い間違いや、誤解を招きそうな言い方があれば指摘してください」と頼みます。
自分の動画を何度も見返すより、文字で確認するほうがずっと早いですし、気持ちも楽です。

③ 冒頭の言葉とタイトルを考えてもらう
「最初の数秒で、誰に向けた話か分かるか」は、本人がいちばん判断しにくいところです。
AIに「この動画の冒頭に入れる一言の候補を5つ」「タイトル候補を5つ」と頼めば、選ぶだけで済みます。

④ 字幕をつける
文字起こしがあれば、字幕も作れます。
音を消して見る人にも伝わりますし、言い間違いがあっても字幕で正しい言葉を見せられます。

どれも、カメラの前に立つのが苦手なことを直すわけではありません。
でも、「これで出していいのか」という迷いを、確認できる項目に変えてくれる。
ここがAIのいちばん効く場所だと思っています。

たとえば、こんな会社があったとします

少しイメージしやすくするために、仮の話をさせてください。

たとえば、地方で工務店をやっている社長がいたとします。
現場の様子や家づくりの考え方を伝えたくて、スマホで何本か動画を撮った。
でも、見返すと話がまとまっていない気がして、どれも出せずにいる。

この社長が、さっきの順番を試したとします。

まず、撮った動画の中から1本選んで文字起こしをする。
AIに伝えたいことを1行にしてもらうと、「冬でも足元が冷えない家にしたい」という話だと分かった。
冒頭に「冬、足元が冷えてつらい方へ」という一言を字幕で入れる。
事実の確認だけAIにしてもらい、出す。

撮り直しはしていません。
変わったのは、出す前に確認する項目が決まったことだけです。

これで反応が来るかどうかは、出してみないと分かりません。
ただ、カメラロールに眠っている限り、反応が来る可能性はゼロなんですよね。

明日から何をするか

最後に、明日からできることを書いておきます。

1. カメラロールを開いて、出していない動画を数える
まずは現状を知るところからです。思ったより多くて驚くかもしれません。

2. 自分の「出す基準」を3つだけ書く
上に書いた3つをそのまま使っても大丈夫です。紙に書いて、見える場所に貼っておくのがおすすめです。

3. 1本だけ選んで、文字起こしをAIに渡す
「伝えたいことを1行に」「間違いがあれば指摘して」「冒頭の一言を5つ」の3つを頼みます。

4. 基準を満たしていたら、その日のうちに出す
寝かせると、また迷いが戻ってきます。基準を満たしたら、その日のうちに出してしまいましょう。

動画がたくさんの人に届くかどうかは、正直、私たちにはコントロールできません。
ただ、撮った動画を出すかどうかは、今日から自分で決められることなんです。

まずは1本、カメラロールから外に出してあげてください。

西埜巧祐

西埜巧祐

マーケティングコンサルタント/セールスコピーライター

西埜巧祐(にしのこうすけ、埼玉県出身、法政大学理工学部卒)は、日本のダイレクトレスポンスマーケティング/セールスコピーライティング/AIを活用したマーケティング・セールス・ビジネス成長の専門家。株式会社Earnestness 代表取締役。セールスライターとして約10年にわたって活動し、1,000人以上に指導。Dan Kennedy 著『売るプレゼン』監訳。著書に『AIライティングの教科書』『AI化の教科書』がある。

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