もしあなたが、商品やサービスの中身には自信があるのに、売上が安定しない、、、という感覚があるなら。
良いものを作っている。お客さんの評判も悪くない。なのに、月によって売上がガタつく。値下げをすると売れるけれど、利益が残らない。値上げをしたいけれど、怖くてできない。
そういう感覚があるなら、この記事は役に立つと思います。
以前、「オファーとは?マーケティングの成否を左右する5つの要素」という記事を書きました。ただ、書いたあとにずっと引っかかっていたことがあるんです。それは、要素の話をする前に「そもそもオファーとは何か」の定義が、世の中でかなりズレているということです。
今回は、そこを腰を据えて書きます。
「オファー」を誤解しているマーケターが多い理由
マーケティングを学び始めた人に「オファーって何ですか?」と聞くと、だいたい次のどれかが返ってきます。
「商品のことですよね」
「割引とか特典のことですよね」
「提案することですよね」
どれも、間違いではありません。ただ、どれも一部しか指していないんです。
なぜこういうズレが起きるのか。私は、「オファー」という言葉が、英語の日常語としての「offer(申し出)」と、マーケティング用語としての「オファー」の両方で使われているからだと思っています。
日常語の「申し出」として受け取ると、「何かを差し出す行為」になります。だから「提案すること」「値引きすること」と理解してしまう。
そしてもう一つ。多くの人は、オファーを「商品ができたあとに、最後に付け足すもの」だと思っています。商品を作って、価格を決めて、売れなかったら特典を足す。この順番で考えている限り、オファーは「おまけ」の扱いから抜け出せません。
私はここで「あれ?」と思うんです。売れるかどうかを決めている一番大きな変数が、なぜ最後に付け足される扱いなのか、、、と。
そもそも、オファーとは何か——正しい定義
私の定義はこうです。
オファーとは、「あなたがこれを差し出すなら、私はこれを差し出します」という、取引の条件の全体である。
商品だけではありません。価格だけでもありません。「何を、いくらで、どんな条件で、どんなリスクを誰が負って、いつまでに受け取れるのか」。この束ごと、ひとまとまりで提示されるものがオファーです。
お客さんは、商品を買っているようで、実はこの「条件の束」を見て、買うか買わないかを決めています。
これ、不動産とまったく同じ構図じゃないでしょうか。
同じマンションの同じ部屋でも、「頭金なし・35年ローン・手数料込み」と「全額現金・即日引き渡し」では、買える人も、買う気になる人もまったく変わります。部屋は一ミリも変わっていないのに、です。
変わったのは、条件の束。つまりオファーです。
ここが大事なポイントです。商品の品質を上げることと、オファーを強くすることは、別の作業なんです。
品質に自信があるのに売れない人は、品質を上げる努力ばかりしています。でも、お客さんが見ているのは条件の束です。条件の束を設計し直さない限り、品質をどれだけ上げても、売れ方は変わらないことが多いんです。
オファーを構成する5つの要素(具体例つき)
条件の束を、分解してみましょう。私は5つに分けて見ています。
① 何が手に入るのか(成果)
商品そのものではなく、「それを受け取ったあと、相手の何が変わるのか」です。たとえばコンサルなら、「月2回の面談」ではなく「来月の販促企画が決まっている状態」が、手に入るものです。
② 何を差し出すのか(対価)
お金だけではありません。時間、手間、他の選択肢を捨てること。これらも相手が差し出すものです。「安いけれど毎週3時間拘束される講座」は、対価が重いオファーなんです。
③ 誰がリスクを負うのか(保証・条件)
「合わなければ初回で終了できる」「成果が出なければ次月は無料で延長」。こういう条件は、リスクを売り手側が引き受けるという意思表示です。買う側の不安は、ここで大きく変わります。
④ 何が付いてくるのか(特典)
本体の価値を補強するもの。ただし、本体と関係のない特典は、むしろ怪しさを増やします。たとえば「ライティング講座に、動画編集ソフトの割引券」は、相手に「なぜ?」を生むだけです。
⑤ いつまで・何人まで(締切・枠)
今決めるべき理由です。これがないオファーは、「いつでも買える」ので、「いつまでも買わない」になります。
この5つを、あなたの今のオファーに当てはめてみてください。たぶん、①と②しか決めていない、という方が多いと思います。それは、オファーのうち半分も設計していない、ということなんです。
値上げせずに売上を増やすためのオファー改善の手順
「売上を上げたい。でも値上げは怖い」。この相談は本当に多いです。
私の答えはシンプルで、価格を触る前に、価格以外の4つを触ってください、です。
手順はこうです。
手順1:①を「商品名」から「相手の変化」に書き換える
あなたの商品説明に書かれているのは、商品の中身ですか、それとも相手の変化ですか。「全12回の講義」は中身です。「12回終わったとき、自分の商品のセールスレターが一本仕上がっている」は変化です。まずここを書き換えます。価格は一円も変えていません。
手順2:②の「お金以外の対価」を軽くする
相手が差し出しているのは、お金だけではないと言いました。申込の手間、学ぶ時間、人に言うときの気恥ずかしさ。これらを一つずつ軽くします。たとえば、申込フォームの項目を減らす。初回を短くする。これも価格は変わりません。
手順3:③で、リスクを一つだけ引き受ける
全部は引き受けなくていいんです。「初回が合わなければ、以降の分は請求しません」のように、相手が一番怖がっている一点だけ、こちらが持つ。相手の「失敗したらどうしよう」が、「試してみよう」に変わります。
手順4:④を「本体の弱点を埋めるもの」に絞る
特典は数ではありません。「この商品を買った人が、途中でつまずくところはどこか」を考えて、そこを埋めるものだけを付けます。たとえば、講座なら「書けなくて止まる」が最大のつまずきなら、「書き出しテンプレート」が特典になります。
手順5:⑤で、理由のある締切を置く
理由のない締切は信用されません。「次の募集は来期になります」「私が直接見られる人数の上限です」。理由と一緒に置きます。
ここまでやって、はじめて価格の話です。
そして面白いことに、ここまで整えると、値上げが怖くなくなるんです。なぜなら、相手が受け取る条件の束が、以前より明らかに良くなっているからです。値上げの根拠が、自分の中にできる。
よくある「弱いオファー」のパターンと改善例
私がよく見る、弱いオファーのパターンを3つ挙げます。
パターン1:商品説明がオファーだと思っている
「〇〇が学べます」「△△が含まれます」が並んでいるだけ。これは①の、しかも中身側しか書いていない状態です。改善は、各項目の後ろに「それで、あなたはどうなるのか」を一行足すこと。
パターン2:値引きだけで勝負している
「今なら半額」。確かに売れます。ただ、これは②のお金だけを軽くしているので、「安いから買う人」が集まります。改善は、③と④を先に整えること。値引きは、条件の束が整っていない人の、最後の手段なんです。
パターン3:特典が本体と無関係
「申込者全員に〇〇をプレゼント」。本体と関係がないと、相手は「本体に自信がないのかな」と感じます。改善は、特典を「本体でつまずく場所を埋めるもの」に差し替えること。
たとえば、ある個人コンサルタントの方が「月額のコンサル契約が決まらない」と悩んでいたとします。商品説明には「月2回の面談」「チャット相談無制限」とある。これはパターン1です。
これを、「月末に翌月の販促計画が一枚にまとまっている状態をお約束します」「初月で合わないと感じたら、残りは請求しません」に書き換えたら。面談回数も価格も変えていないのに、相手の受け取り方はまったく変わるはずです。
まとめ:明日から使えるオファー設計チェックリスト
今日の話を、明日の作業に落とします。やることは一つだけ。あなたの商品を、5つの問いで書き出してください。
- 相手は、これを受け取ったあと、何が変わるのか(商品名で答えない)
- 相手は、お金以外に何を差し出しているのか(時間・手間・不安)
- 失敗したときのリスクは、今、誰が負っているのか
- 付けている特典は、本体のどのつまずきを埋めているのか
- 今、決めるべき理由は何か。その理由は本当か
5つのうち、答えられなかった問いが、あなたのオファーの弱いところです。そこを一つ直す。価格は、まだ触らなくていいです。
売れるかどうかは、正直、私たちにはコントロールできません。
ただ、「商品」ではなく「条件の束」を設計し直すことは、明日からできることなんです。