「AIにはこう言われた」と言うお客さん。食い違いを防ぐ3つの準備

「AIにはこう言われた」と言うお客さん。食い違いを防ぐ3つの準備

お客さんが問い合わせ前にAIで規約を調べる時代。米国の調査では44%がAIと会社の説明の食い違いを経験。小さな会社が明日からできる、規約ページと現場の一言の整え方を解説します。

もしあなたが、お客さんから「でも、AIにはこう言われたんですけど」と言われて、一瞬言葉に詰まった経験があるなら。

あるいは、まだ言われたことはないけれど、言われたらどう返せばいいのか、正直わからない。

そういう感覚があるなら、この記事は役に立つと思います。

今日は、海外で出てきたある調査の話から始めます。

海外で起きていること:お客さんがAIを連れて問い合わせてくる

アメリカのCapacity社が、2026年10月に「The Agentic Consumer Report」という調査を公表しました(出典: Capacity社のプレスリリース・2026年10月)。

米国の消費者1,000人に聞いたもので、中身がなかなか面白いんです。

  • 調査では、55%が問い合わせやサポートのやり取りでAIツールを使ったことがある
  • 調査では、44%が「AIの言うことが、会社の担当者や会社の規約と食い違った」と答えた
  • 調査では、36%が返品・返金・キャンセルのルールをAIで調べるつもりだと答えた
  • 調査では、23%がAIを使うことで、担当者に「規約のどこにそう書いてあるのか」説明を求めるようになると答えた

さらに、AIの答えと担当者の答えが食い違ったとき、どちらを信じるかは「同じくらい」だったそうです。

つまり、お店の人が言うことが、当然のように正しいとは思ってもらえない。

ちなみに、Capacity社はAIのサポート自動化を売っている会社なので、そこは割り引いて読む必要があります。ただ、この調査で44%が食い違いを経験しているという数字は、無視できないと思います。

しかも、これはアメリカだけの話ではないと思っています。日本でも、問い合わせの前にAIで調べるお客さんは、これから増えていくと思います。電話をかける前に、メールを送る前に、まずAIに聞く。その習慣が広がるほど、「AIにはこう言われた」という一言は、どの会社の窓口にも届くようになります。

あれ? これ、「ネットに書いてあった」と同じ構図では

私はこの調査を読んで、あれ? と思いました。

これ、昔からある「知り合いがこう言ってた」「ネットにこう書いてあった」と、まったく同じ構図じゃないでしょうか。

お客さんが、どこかで聞いてきた情報を持って来る。それが会社のルールと違う。現場が困る。

ただ、決定的に違うところが2つあるんです。

1つ目は、AIは自信満々に、しかも丁寧に答えること。

知り合いの話なら「まあ、うろ覚えかもしれないけど」がつきます。AIの答えには、それがつきません。だから、お客さんの中で「正しい情報」として固まってしまう。

2つ目は、AIの答えの元が、あなたの会社自身のページであることが多いこと。

AIは、あなたの会社のサイト・古いお知らせ・口コミ・よく似た他社のルールを混ぜて答えを作ります。そして、書いていない部分は、それらしく埋めてしまう。

ここで大事なポイントに気づきました。

食い違いの多くは、AIが勝手にウソをついたというより、会社が書いていない(または古いまま放置している)部分から生まれているんです。

規約は、お客さんのAIが読む「台本」になった

ここで、定義を1つ変えたいと思います。

返品・キャンセル・料金のページは、お客さんのAIが読み上げる「台本」になった。

これまで、こうしたページは「トラブルのときに見せるもの」でした。めったに読まれない、いわば保険です。

でも今は違います。お客さんは、問い合わせる前にAIに聞きます。AIはそのページを読んで答えます。

つまり、あなたの会社のルールを最初にお客さんへ説明しているのは、あなたでもスタッフでもなく、お客さんのAIかもしれないんです。

台本に書いていないセリフは、役者がアドリブで埋めます。AIも同じです、、、

たとえば、こんな場面

たとえば、小さなネットショップがあったとします。

返品のページには「商品到着後7日以内」とだけ書いてある。セール品は返品できない、というのは、社長の頭の中にだけあるルールです。

お客さんがAIに「このお店、セール品も返品できる?」と聞く。AIは、ページに「セール品は不可」と書いていないので、「到着後7日以内なら返品できるようです」と答える。

お客さんは、それを信じて問い合わせてきます。

「AIには返品できるって言われたんですけど」

ここで「いや、セール品はダメなんです」と返すと、どうなるか。お客さんから見ると、お店が後からルールを変えたように見えるんですよね。

悪いのは誰か、という話ではありません。台本に書いていなかった。それだけなんです。

そして、こういう食い違いは、1回の返品の損よりも、お客さんの「このお店は信用できるのか」という気持ちのほうに大きく響きます。小さな会社ほど、ここが効いてくると思っています。

明日から何をするか

最後に、明日からできることを3つ書きます。どれも、1時間あれば手をつけられます。

1. 自分の会社のルールを、AIに聞いてみる

ChatGPT、Gemini、Claude など、お客さんが使っていそうなAIに、お客さんのつもりで聞いてみてください。

「(会社名)は返品できますか?」「キャンセル料はかかりますか?」「土日も対応していますか?」

返ってきた答えと、実際のルールを並べて見比べます。食い違ったところが、明日直す場所です。

2. 「頭の中にだけあるルール」を、ページに書く

セール品の扱い、例外、期限の数え方、送料は誰が持つのか。

社長やベテランのスタッフが「当たり前」だと思っていることほど、書かれていません。書かれていないことは、AIがアドリブで埋めます。

あわせて、ページに「最終更新日」を入れておくと、古い情報と区別がつきやすくなると思います。

3. 「AIにはこう言われた」と言われたときの一言を決めておく

ここが一番大事かもしれません。

調査では、AIと担当者のどちらを信じるかは同じくらいでした。だから、真っ向から否定すると、お客さんは「お店がごまかしている」と感じやすい。

おすすめは、こういう順番です。

  • まず受け止める(「そう案内されたんですね。確認させてください」)
  • 根拠のページを一緒に見る(「こちらに書いてあるルールでは〜です」)
  • ページに書いていなかった部分なら、今回どうするかを決める人を決めておく

3つ目が抜けると、現場のスタッフが毎回板挟みになります。「書いていなかったことで揉めたら、誰が判断するか」だけは、先に決めておいてください。

お客さんがどのAIを使い、AIが何と答えるかは、正直、私たちにはコントロールできません。

ただ、AIが読む台本を整えておくことは、今日からできることなんです。

西埜巧祐

西埜巧祐

マーケティングコンサルタント/セールスコピーライター

西埜巧祐(にしのこうすけ、埼玉県出身、法政大学理工学部卒)は、日本のダイレクトレスポンスマーケティング/セールスコピーライティング/AIを活用したマーケティング・セールス・ビジネス成長の専門家。株式会社Earnestness 代表取締役。セールスライターとして約10年にわたって活動し、1,000人以上に指導。Dan Kennedy 著『売るプレゼン』監訳。著書に『AIライティングの教科書』『AI化の教科書』がある。

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