AIを「使う」会社は86%、「組み込めた」会社は15%。差を分けるたった1つの仕事

AIを「使う」会社は86%、「組み込めた」会社は15%。差を分けるたった1つの仕事

海外の調査では、AIを使う小さな会社は86%なのに、中核業務に組み込めたのは15%だけ。便利な道具止まりから抜け出すために、1つの仕事を作り直す4つの決めごとと明日からの手順を紹介します。

もしあなたが、AIを毎日のように使っているのに、何かが変わった実感がないなら。

ChatGPTやClaudeを開いて、メールの下書きを作ってもらったり、アイディアを出してもらったり。便利なのは間違いない。

でも、会社の仕事の流れ自体は、去年とほとんど変わっていない、、、

そういう感覚があるなら、この記事は役に立つと思います。

先日、海外でちょっと気になる調査が出ました。アメリカの小さな会社が、AIをどう使っているかの調査です。

数字を見て、私は「あれ?」と思いました。というのも、そこに映っていたのが、まさに今の日本の小さな会社の姿だったからなんです。

「使っている」と「組み込めた」のあいだにある大きな差

海外では、Goldman Sachsが小さな会社向けの支援プログラム「10,000 Small Businesses」の修了者2,473人に調査をしています(出典: Goldman Sachs「The AI Economy Is a Small Business Economy」2026年10月、ANI配信の報道より)。

結果はこうです。

調査によると、AIを使っている会社は、2024年の56%から、2026年には86%まで増えました。

ここまでは、よくある「AIが広がっています」という話ですよね。

ただ、私が引っかかったのは次の数字です。

同じ調査で、AIを会社の中核の業務に完全に組み込めている会社は、全体の15%だけ。

AIを使っている会社だけに絞っても、調査の数字は18%です。

つまり、使っている会社の大半は、AIを「ときどき開く便利な道具」として使っている。仕事の流れそのものには、まだ入っていないんです。

さらに同じ調査では、AIを使っている経営者の74%が、社員のAIの使い方について正式なルールを持っていないとも報告されています。

使い方は人まかせ。仕事の流れは昔のまま。そこにAIが「足されている」だけ。

これ、日本でも同じじゃないでしょうか。

電卓を配っても、経理の仕事は変わらない

少したとえ話をさせてください。

昔、電卓が会社に入ってきたときのことを想像してみてください。

全員の机に電卓を配った。計算は速くなった。でも、伝票の流れ、確認のハンコの数、月末の締め方は、何も変わらなかった。

これだと、速くなったのは「計算の数秒」だけなんですよね。

本当に仕事が変わったのは、表計算ソフトが入って、「そもそも伝票をどう回すか」から組み直したときだったと思います。

今のAIは、まさに「全員の机に電卓を配った」段階なんです。

チャットに聞く。答えが返ってくる。コピーして貼る。

便利です。でも、その仕事の前と後ろ、つまり「誰が材料を集めて」「誰が確認して」「どこに残すか」は、昔のまま。

ここで、もう1つ面白い数字があります。

同じ調査で、AIを使う用途として「財務の分析や事業計画」は2024年の18%から2026年には42%に増えています。一方で、「マーケティングの文章作り」は74%から65%に減っているんです。

文章を作らせる、という一番わかりやすい使い方から、少しずつ「考える仕事」「数字を見る仕事」に広がり始めている。

私はこれを、「つまみ食い」から「組み込み」へ移る途中の姿だと見ています。

組み込むとは、「1つの仕事を最初から最後まで」通すこと

では、組み込むとはどういうことでしょうか?

私なりの定義はこうです。

組み込むとは、1つの仕事を、材料集めから確認・保存までAIと一緒に通しきる形に作り直すこと。

ポイントは「1つ」です。

全部の仕事にAIを入れようとすると、まず止まります。小さな会社では、なおさらです。

たとえば、こういう会社があったとします。

社員5人の工務店。毎週、問い合わせへの返信、見積もりの下書き、ブログの更新、月末の数字のまとめをしている。

社長も社員も、AIはそれぞれ使っています。返信文をChatGPTに作らせる人もいれば、使わない人もいる。結果、返信の質も速さも、人によってバラバラです。

この会社が「組み込み」をやるとしたら、全部ではなく、たとえば「問い合わせへの返信」だけを選びます。

そして、次の4つを決めます。

1つ目は、材料。問い合わせ文に加えて、価格の考え方や施工の流れなど、AIに毎回渡す「会社の前提」を1枚にまとめる。

2つ目は、手順。誰がAIに渡し、どの型で下書きを作るか。

3つ目は、確認。送る前に誰が見るか。何を見たら止めるか。

4つ目は、保存。送った返信をどこに残し、次の改善に使うか。

こうして1つの仕事を通しきると、AIは「誰かの便利な道具」から「会社の仕事の一部」に変わります。

そして、1つ通せると、2つ目からは驚くほど速くなるんです。型ができているので。

なぜ、ほとんどの会社が「つまみ食い」で止まるのか

うーん、ここが大事なポイントだと思っています。

調査では、77%の人が「もっと研修や情報があると助かる」と答えています。

ただ、私は、足りないのは知識だけではないと思っています。

足りないのは、「どの仕事を作り直すか」を決める時間なんです。

AIの使い方を学ぶ時間は、みなさん取っています。新しいツールの記事も読むし、動画も見る。

でも、自分の会社の仕事の流れを紙に書き出して、「ここを作り直そう」と決める時間は、ほとんど取られていない。

これは、新しい調理器具を次々に買っているのに、献立を決めていない状態に似ています。

道具は増える。でも、毎日の食卓は変わらない、、、

そして、もう1つ。ルールがないまま使っていると、社員ごとに使い方がバラバラになります。同じ会社なのに、AIが出す答えの質が人によって違う。これでは、仕事に組み込みようがないですよね。

ルールといっても、分厚い規程はいりません。「この仕事では、この材料を渡して、この人が確認して、ここに残す」。これだけで十分です。

明日から何をするか

最後に、明日からできることを書いておきます。

1つ目。紙を1枚用意して、あなたの会社で「毎週必ず発生する仕事」を5つ書き出してください。問い合わせ対応、見積もり、請求、発信、数字のまとめ、などです。

2つ目。その中から、「毎回やり方が人によって違うもの」を1つだけ選んでください。ここがいちばん、組み込みの効果が出やすいところです。

3つ目。選んだ仕事について、さきほどの4つ(材料・手順・確認・保存)を、それぞれ1行で書いてください。完璧でなくて構いません。

4つ目。その1行メモを社内で共有して、来週1週間だけ、その仕事は全員がその型で回してみてください。

1週間たったら、どこで詰まったかを見直す。それだけです。

AIの性能がこの先どう伸びていくかは、正直、私たちにはコントロールできません。

ただ、1つの仕事を最初から最後までAIと通しきる形に作り直すことは、今日からできることなんです。

調査の86%の側にいるだけで満足せず、15%の側に、まず1つの仕事から移ってみませんか。

西埜巧祐

西埜巧祐

マーケティングコンサルタント/セールスコピーライター

西埜巧祐(にしのこうすけ、埼玉県出身、法政大学理工学部卒)は、日本のダイレクトレスポンスマーケティング/セールスコピーライティング/AIを活用したマーケティング・セールス・ビジネス成長の専門家。株式会社Earnestness 代表取締役。セールスライターとして約10年にわたって活動し、1,000人以上に指導。Dan Kennedy 著『売るプレゼン』監訳。著書に『AIライティングの教科書』『AI化の教科書』がある。

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