マーケティングでいうオファーとは、「何を・いくらで・どんな条件で・いつまでに渡すか」という取引の条件の全体のことです。商品そのものでも、値引きのことでもありません。プロモーションの成否は「リスト>オファー>コピー」の順で決まると言われ、オファーが良ければ、売り方やコピーが多少下手でも売れます。逆は、ほとんどありません。
この記事では、オファーの意味、商品との違い、オファーを作る5つの要素、値下げせずにオファーを強くする手順までを、1本にまとめます。
オファーとは何か:意味と、よくある誤解
「オファーって何ですか?」と聞くと、だいたい次のどれかが返ってきます。
- 割引・キャンペーンのこと
- 商品そのもののこと
- 「ご購入はお早めに」という呼びかけのこと
どれも間違いではありません。ただ、どれも一部なんです。
私の定義はこうです。
オファーとは、「あなたがこれを差し出すなら、私はこれを、この条件で渡します」という取引の提案まるごと。
お客さんは商品を買っているようで、実はこの「条件の束」を見て、買うか買わないかを決めています。
オファーを「値引き」だと思っていると、オファーを強くしようとするたびに値段を下げるしか手がなくなります。これは、かなり苦しい状態です。利益が削られるうえに、「待てば安くなる」とお客さんに覚えられてしまいます。
オファーと商品の違い
ここが一番混同されやすいところです。
レストランで考えてみてください。商品は料理そのものです。お肉の質、シェフの腕、味。オファーは、メニューに書かれている提案のほうです。何皿つくか、値段はいくらか、ワインを合わせられるか、記念日ならデザートにメッセージを入れてくれるか、予約はいつまでか。
同じ料理でも、メニューの組み方ひとつで「ここにしよう」と思うかどうかが変わりますよね。
商品 | オファー | |
|---|---|---|
何か | 渡す中身 | 中身の渡し方(取引の条件) |
例 | 講座の内容、料理の味、部屋の広さ | 価格・支払い方・特典・保証・期限 |
良くするのにかかる時間 | 長い(作り直しが要る) | 短い(今日から組み替えられる) |
商品を良くするには時間がかかります。でも、オファーは今日からでも組み替えられる。ここが、オファーを学ぶいちばん大きな理由だと思っています。
なぜオファーが大事なのか:リスト>オファー>コピー
プロモーションの成功を左右する要素には、強さの順番があります。
リスト>オファー>コピー
- リスト: そのプロモーションを、どのお客さんに仕掛けるか。いちばん効きますが、すぐには変えられません
- オファー: 取引の条件。リストの次に効き、しかも自分で組み替えられます
- コピー: 売るための文章。大事ですが、オファーとリストが悪ければ成功しません
どんなに凄腕のセールスマンやコピーライターが売っても、オファーが悪ければ売れません。だから、売れないときに最初に見直すのは、文章より先にオファーです。私もプロモーションのレビューをするときは、必ずこの3つを見ます。
オファーを作る5つの要素
オファーは、次の5つでできています。
要素 | 決めること | 弱いときに起きること |
|---|---|---|
1. 商品と、手に入る変化 | 何を、どんな形で渡すか。受け取った人の何が変わるか | 中身の説明だけになり、買う理由が伝わらない |
2. 価格と支払い方 | いくらか。一括か分割か、何と比べて見せるか | 値段だけで比べられる |
3. 特典 | 本体と一緒に渡すもの | 「おまけ」が並ぶだけで、かえって怪しく見える |
4. 保証 | 合わなかったとき、誰がリスクを負うか | 「失敗したらどうしよう」で止まる |
5. 期限・枠と、次の一歩 | なぜ今なのか。何をすればいいか | 「また今度」と後回しにされる |
1. 商品と、手に入る変化
まず、そもそもその商品は何か。物なのか、サービスなのか、講座なのか。Zoomなのかリアルなのか。いつ、どうやって届くのか。
ここで大事なのは、商品名ではなく「受け取ったあと、相手の何が変わるか」で書くことです。「全12回の講義」は中身です。「12回終わったとき、自分の商品のセールスレターが一本仕上がっている」は変化です。
届け方も条件のうちです。「え、届くの遅い、、、やめておこうかな」という経験、あなたにもあるんじゃないでしょうか。逆に「届くの早い!じゃ、買おう」となることもある。だからAmazonを使うんですよね。
2. 価格と支払い方
価格は「数字」だけではなく、「見せ方」まで含めて価格です。一括か分割か、月額か年額か、何と比べて安いと感じてもらうか。
それから、相手が差し出すのはお金だけではありません。時間、手間、ほかの選択肢を捨てること。「安いけれど毎週3時間拘束される講座」は、対価が重いオファーなんです。
3. 特典
本体と一緒に渡すものです。特典が魅力的で買った経験もあると思います。
ただし、特典は数ではありません。本体を使いこなすための道具になっていることが大事です。講座なら、学んだことをすぐ使えるテンプレートやチェックリスト。本体と関係のない特典を積み上げると、「本体に自信がないのかな」と思われてしまいます。
4. 保証
「もし合わなかったらどうなるのか」への答えです。買う人の不安を、売る側が引き受ける。その範囲を決めるのが保証です。
たとえば集客の講座で「売上が2倍にならなかったら、参加費を2倍にして返します」という保証があったら、買いたくなりませんか?やるかどうかは別として、保証の威力は大きいんです。
返金だけが保証ではありません。「初回が合わなければ、以降の分は請求しません」「使い方が分かるまでサポートします」も立派な保証です。
5. 期限・枠と、次の一歩
「なぜ今なのか」の理由です。締切がないと、人は「また今度」と後回しにします。いつでも買えるものは、いつまでも買われないんです。
ただし、嘘の締切は絶対に使わないこと。「次の募集は来期になります」「私が直接見られる人数の上限です」のように、本当の理由と一緒に置きます。
そして最後に「何をすればいいか」を一つに決めます。「送る」「押す」「予約する」。選択肢が多いほど、人は迷って止まります。
同じ商品でも、オファーで結果が変わる例
たとえば、あるWebデザイナーさんがいたとします。商品は「ホームページ制作」、価格は30万円です。
オファーA: 「ホームページを制作します。30万円です。お問い合わせはこちら。」
オファーB: 「集客できるホームページを制作します。30万円(3回分割も可)。公開後1か月間、アクセスを見ながら修正に無料で対応します。初回の打ち合わせで使える、ページ構成のチェックシートをお渡しします。丁寧に対応するため、制作は月3件までです。まずは下のフォームから、今のサイトのURLを送ってください。」
商品も、デザイナーの腕も、まったく同じです。でも、Bのほうが「頼んでみようかな」と思いやすいですよね。Bには5つの要素が全部入っているからです。
大事なのは、値段を一円も下げていないことです。オファーを強くするのは、値引きではなく条件の組み立てなんです。
値下げせずにオファーを強くする手順
「売上を上げたい。でも値上げは怖い」。この相談は本当に多いです。私の答えはシンプルで、価格を触る前に、価格以外を触ってください、です。
- 商品の説明を「相手の変化」に書き換える。 中身の羅列の後ろに「それで、あなたはどうなるのか」を一行ずつ足す
- お金以外の負担を軽くする。 申込フォームの項目を減らす、初回を短くする。これも価格は変わりません
- リスクを一つだけ引き受ける。 全部でなくていい。相手がいちばん怖がっている一点だけ、こちらが持つ
- 特典を「本体でつまずくところを埋めるもの」に絞る。 書けなくて止まる講座なら、書き出しのテンプレート
- 理由のある締切を置き、次の一歩を一つにする
ここまでやって、はじめて価格の話です。面白いことに、ここまで整えると値上げが怖くなくなります。相手が受け取る条件の束が、以前より明らかに良くなっているからです。
よくある弱いオファーと直し方
よくある形 | 何が起きているか | 直し方 |
|---|---|---|
「今なら半額」だけで勝負している | お金だけを軽くしているので、安さで選ぶ人が集まる | 先に保証と特典を整える。値引きは最後の手段 |
「〇〇が学べます」が並んでいるだけ | 中身の説明しかしていない | 各項目に「それで、どうなるか」を足す |
本体と関係のない特典がたくさん付いている | 量は多く見えるが、何が手に入るか分かりにくい | 本体の成果を早く出す道具に絞る |
「お気軽にどうぞ」で終わっている | 何をすればいいか分からない | 動詞を一つに決める(送る・押す・予約する) |
オファーを見直す5つの問い
今売っている商品を一つ選んで、次の5つに答えを書き出してみてください。
- 相手は、これを受け取ったあと、何が変わるのか(商品名で答えない)
- 相手は、お金以外に何を差し出しているのか(時間・手間・不安)
- 失敗したときのリスクは、今、誰が負っているのか
- 付けている特典は、本体のどのつまずきを埋めているのか
- 今決めるべき理由は何か。その理由は本当か
答えられなかった問いが、あなたのオファーの伸びしろです。そこを一つ直す。価格は、まだ触らなくていいです。
お客さんが買うかどうかは、正直、私たちにはコントロールできません。ただ、「どんな条件で渡すか」を組み立て直すことは、今日からできることなんです。
ー西埜巧祐