AIに企画を考えさせると、なぜ失敗するのか|平均値の罠

AIに企画を考えさせると、なぜ失敗するのか|平均値の罠

「AIに広告のアイデアを100個出させたら、そのうち何個が使えるか?」AIで企画を作ろうとして失敗する人が増えています。AIの出力は本質的に「平均値」であり、ヒットは平均値の外側で生まれる。なぜそうなるのか、解説します。

AIで企画やアイデアを考えさせて、そのまま使える人は、ほぼいません。

理由は単純で、AIの出力は構造的に「平均値」になるからです。

そして、広告でもプロモーションでも、ヒットするものはほぼ常に「平均値の外側」にある。これは確率論的にもそうですし、過去のヒット商品を見ても明らかです。

この記事では、なぜAIの企画が「平均値」になってしまうのか、そしてどうAIと付き合えばいいのかをお話ししていきます。

AIのアイデアは、なぜ「平均値」になるのか

AIは、ネット上の膨大なデータを学習した結果として答えを出します。これは要するに、過去の人類の集合知の平均を出している、ということなんです。

「広告のアピール文を100個出して」と頼めば、過去にあった広告コピーの傾向を統計的に処理した結果が返ってくる。プロンプトで「尖ったものを」「斬新なものを」と指示しても、その「尖り」自体が、過去にあった尖り方の平均から取ってきたものになる。

これは欠陥ではなくて、AIの仕組みの本質です。むしろ、平均値を確実に出してくれるからこそ、AIは仕事の効率化に役立つんです。

問題は、ビジネスのヒットは平均値の外で起こる、ということなんですよ。

「平均値の外」で勝負するとは、どういうことか

カーネル・サンダースは、KFCのフランチャイズを売り込むのに、100軒以上を回って、ようやく1軒の契約を取ったと言われています。しかも、それが彼の60代後半に起きた話。そこから世界中に広がるブランドになっていきました。

つまり、100分の1の世界で成功しているわけです。

これって、平均値からは絶対に出てこない発想と行動ですよね。

皆が「いい」と思うものは、すでに皆がやっている

ビジネスでも同じで、皆が「これいいよね」と思うものは、すでに皆がやっていて、すでにレッドオーシャンになっています。

誰もやっていない、おかしな組み合わせ、業界の常識から外れたアプローチ。こういうところからしか、本当のヒットは生まれません。

AIは「皆が良いと思うもの」を出すのが得意です。でも、それは同時に「すでに皆がやっているもの」でもある、ということになります。

じゃあ、AIで企画は作れないのか?

「じゃあ企画にAIは使えない」かというと、そうじゃないんです。使い方が違う、という話です。

AIで企画やアイデアを作るときの正しい使い方は、次の3ステップだと思っています。

① 量を出させる(50個・100個レベルで)

AIの強みは「選択肢の量」です。人間が一人で50個のアイデアを出すには時間がかかりますが、AIなら数分で出せる。

ここでは、平均値であることを気にしません。むしろ、平均値・凡庸・典型的、何でも構わないので、とにかく量を出させる。

② 人間が「磨く価値があるもの」を選ぶ

50個のアイデアの中から、片手で数えるくらい、2〜3個に絞ります。

選ぶ基準は「これ伸びるんじゃないか」「これ尖らせたら面白くなりそう」という直感です。この直感は、業界経験とお客さんの理解からしか生まれません。AIは選べないんです。

③ 人間が改善し、平均値の外側に持っていく

選んだ2〜3個を、そのまま使うのではなく、人間側が磨きをかける。

「ここをもっと尖らせたら」「この前提を逆にしたら」「このターゲットを思い切って絞ったら」。こうした改善を経て初めて、平均値を超えるものが出来上がります。

つまり、AIは「量を出す」係。人間は「選んで磨く」係。役割分担が明確になるんです。

余談:制作の仕事はAIが食っていく

ここで企画の話と並べて、もう一つ大事な観点を共有させてください。

これからの仕事で、「制作」と呼ばれる部分は、かなりAIが食っていきます。これは、私自身が現場で日々感じていることです。

自分でやってみて、驚いていること

ここ最近、私自身がAIで作れてしまったものを挙げてみます:

  • 会社のホームページ:デザイナーでもプログラマーでもない私が、自分で作り直しました
  • LP(ランディングページ):去年くらいから、自分で作れるようになった
  • YouTube ショート動画:YouTubeのリンクをAIに渡すと、自動で6〜10本のショートに切り出してくれるツールも作れた
  • ファネルシステム:UTAGE、ClickFunnels、EasyWebinar、Deadline Funnelといった有料サービスの機能の一部を、自社用に作れた(70%完成度)

これらはすべて、これまで「制作」として外注したり、有料サービスで賄っていたものです。それが、自分でAIを使って作れる時代になりました。

画像も今やGPT Image 1で十分なクオリティが出る。動画も今後さらにできることが広がる。3D動画も、おそらくすぐに来ると思っています。

つまり、「制作」と呼ばれる作業の大部分は、AIに置き換えられていく、ということなんです。

でも、企画は別

ここが大事なポイントなんですが、「制作はAIが食う」けれど、「企画は人間に残る」というのが私の見方です。

なぜなら、制作は平均値で十分機能するからなんですよ。普通のホームページ、普通のLP、普通のショート動画。これらは平均値で全く問題ない。

一方で、企画は平均値だと刺さらない。プロモーションが平均値の塊になってくれば、お客さんの「買う」という選択は徐々に減っていくと思います。

平均値プロモーションの罠:SEO業界に学ぶ

これは、過去のSEO業界の話と重ねるとイメージしやすいと思います。

ライターをたくさん雇って、たくさんの記事を量産し、検索順位を上げてトラフィックを増やす。これが一時期の主流でした。

でもGoogleがアルゴリズムを変えた瞬間、それがダメになった。質の低い量産記事は、ペナルティで一気に評価を落とした。

同じことが、プロモーションでも起こる

プロモーションも同じ道を辿ると思います。AIで似たようなプロモーションが量産されると、業界全体で消費者の反応が鈍化し、最終的に売れなくなる。

この時点で生き残るのは、企画に磨きをかけ、平均値の外側で勝負できる人だけです。

まとめ:AIで作った量だけ、足枷も増える

予測としてお伝えしたいのは、これからの時代、AIで作るコンテンツの量を増やすほど、ビジネスでの足枷が増えていく、ということです。

平均値の塊が市場に溢れれば溢れるほど、消費者は反応しなくなる。広告は刺さらなくなる。コンテンツは読まれなくなる。

逆に、AIを「量を出す係」として使い、人間が「選んで磨く係」を担う。この役割分担ができている人だけが、平均値の外側でヒットを作っていけるんじゃないかと思います。


FAQ

Q. AIで広告コピーを作るのは、もうやめた方がいいですか? A. やめる必要はありません。ただし「AIに最終アウトプットを任せる」のはやめた方がいいです。AIには量を出させ、選んで磨くのは人間。この役割分担が機能すれば、AIは強力な武器になります。

Q. AIが作ったコピーをそのまま使うと、なぜ売れないのですか? A. 平均値だからです。ヒットするコピーは、過去に例のない切り口や、業界の常識から外れた前提から生まれることが多く、AIはその「外れ方」が苦手なんですよ。

Q. 制作(デザイン、動画、LP)もすべてAIに任せていいですか? A. 制作は、平均値で機能するなら任せて大丈夫です。ただし、ブランドの根幹に関わる部分(ロゴ、世界観、独自性が必要な部分)は人間が判断・調整するのが安全だと思います。


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西埜巧祐

西埜巧祐

マーケティングコンサルタント/セールスコピーライター

西埜巧祐(にしのこうすけ、埼玉県出身、法政大学理工学部卒)は、日本のダイレクトレスポンスマーケティング/セールスコピーライティング/AIを活用したマーケティング・セールス・ビジネス成長の専門家。株式会社Earnestness 代表取締役。セールスライターとして約10年にわたって活動し、1,000人以上に指導。Dan Kennedy 著『売るプレゼン』監訳。

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