僕がAI実践会の価格を、AIの提案と違う値段に決めた理由

僕がAI実践会の価格を、AIの提案と違う値段に決めた理由

AIは「30万〜50万円が妥当」と提案してきました。でも私は、年間9,800円のサブスクという真逆の選択をしました。なぜか。AIに任せていい仕事と、絶対に人間がやるべき意思決定の話です。

最初に結論をお伝えします。

AIは、参謀にはなれます。でも、意思決定者にはなれません。

「A・B・C、どれがいいですか?」という選択肢を整理してくれるのはAIの得意技です。ところが、どれを選ぶか、そして選択肢の外の観点を持ち込むこと、これはAIにはできない領域なんです。

しかも、責任を取るのは結局自分です。AIは責任を取れません。

この記事では、私が実際にAI実践会の価格を決めるときに、AIの提案と真逆の意思決定をした話を共有します。これは、AIに任せていい仕事と、絶対に人間がやるべき仕事の境界線を考える、いい題材だと思っています。

AIの提案:「30万〜50万円が妥当です」

この記事を書いている時点で、私が運営している「AI実践会」というサービスは、年間9,800円のサブスクで提供しています(記事執筆時点)。

AIを実践的に学ぶ場として、最新情報のアップデートを継続的に届けるコミュニティです。

価格を決めるとき、AIに市場調査と価格提案をしてもらいました。AIの提案は明確でした。

「西埜さんのマーケティング・セールスの知見を、AIを通して実践的に使う方法が学べる講座は、高値で売るべきです」

実際にAIで市場調査をすると、同領域のオンライン講座はだいたい30万〜50万円の価格帯。私のクライアントさんでも、そういう価格設定でうまくいっている方もいる。

理にかなっていますよね。50万円の商品を作って、3〜4件売れれば売上としてかなり大きい。AI領域は伸びしろもある。AIの提案は、データ的には完全に正しい。

私の判断:年間9,800円のサブスクにする

ところが、私は真逆の判断をしました。

理由を一言で言うと、「AIにそんなに価値はない」と思ったからです。

ここでの「価値がない」は、AIが役に立たない、という意味ではありません。「価格に乗せられるほどの構造的価値がない」という意味です。

具体的に説明します。

理由①:AIで作った講座は、半年で陳腐化する

去年12月の段階で、50万円のAI講座を作ったとします。今、その講座を買って、内容を実践しようとして、ちゃんと使えるでしょうか。

おそらく無理です。

例を挙げますね。一時期、Sora 2を使ってリードを獲得する方法、という講座が海外で出ていました。Sora 2でAI動画を生成し、SNSのプラットフォーム化していたものから、リードを獲得する手法。当時はバズりました。

でも今は、その手法はもう使えません。Sora 2自体がもう撤退方向で、プラットフォームとして残らない。

画像生成も同じです。少し前まではStable DiffusionやMidjourneyを駆使する講座がありました。でも今、GPT Image 1を使えば、サクッといい画像が作れる。「画像をAIで作る方法」を50万円で学んだ意味は、半年でほぼなくなる、ということになります。

お客さんに50万円払ってもらった商品が、半年後に使えなくなる。これは、本質的な価値があると言えるのか。私は、そう思えませんでした。

理由②:AIはこれから「インフラ」になる

もう一つの観点は、AIの位置づけです。

これからAIは、誰もが使うものになります。携帯電話と同じような、いわばインフラだと思っています。

そういうインフラの「使い方」に50万円の付加価値をつけるのは、相当難しい。

たとえば「LPの作り方を学べる講座」が50万円で売られていることがあります。でも今、LPは50万円かけなくても、AIでそこそこいいものが作れる時代になりました。そうなったとき、その50万円という価格は、お客さんに対して申し訳ない気持ちになるんですよ。

理由③:最新情報をアップデートし続けるには、サブスクしかない

AI領域は、毎月のように新しいツールが出て、古いツールが消えていきます。これを買い切り講座でカバーするのは、構造的に無理があります。

最新情報をアップデートし続けるには、サブスクという形態しかない。だから、年間9,800円という価格設定にしました。

「価格を決めることは経営である」

「商品の価格をいくらにするか、価格を決めることは経営だ」

これは私が経営の文脈で何度も聞いてきた言葉です。価格は単なる数字ではなくて、会社のスタンスの表明なんですよね。

AIの提案は「30万〜50万円が妥当」でした。データに基づけば、それは正しい。でも私は、それを採用しませんでした。

AIには見えていない、人間の「観点」

理由は、AIには見えていない観点があるからです:

  • 半年後に使えなくなる商品を売ることへの、私自身の価値観
  • AIがインフラ化していく未来への予測
  • 自分のお客さんに対して、誠実でありたいという軸
  • サブスクで継続的に関係を築きたいというビジネス設計

これらは、AIには判断できません。AIは過去のデータから「妥当な価格帯」を提示できるだけで、未来の構造変化や、私個人の価値観は、AIの管轄外なんです。

AIに任せていい意思決定 / 任せちゃダメな意思決定

私の経験から、線引きを表にしてみます。

AIに任せていい

人間がやるべき

データの整理・分析

価格設定

選択肢の洗い出し

事業の継続 / 撤退

過去事例のリサーチ

採用 / 解雇

各案のメリット・デメリット整理

パートナー選定

シミュレーション

会社のスタンス・価値観

AIは「情報を整理し、選択肢を提示する参謀」としては最高です。でも、最終決定の「エイヤ」は、人間がやるしかない。

個人的な振り返り:あの判断は良かったと思う

率直に言って、AI実践会の価格決めは、すごく悩みました。

50万円で売れていたら、売上としては大きかった。それは事実です。

でも、自分の価値観として、半年後に使えなくなる商品を50万円で売ることに、どうしても納得がいかなかったんです。年間9,800円という形なら、最新情報を継続的にお届けできるし、お客さんに誠実でいられる。自信を持って提案できる。

意思決定をした後、自分の中で「あの判断は良かった」と思えるかどうか。これがAIには出せない、人間の意思決定の本質だと思っています。

まとめ:意思決定スキルは、AI時代にこそ磨くべき

AIは、意思決定をサポートすることはできます。情報整理、選択肢の提示、シミュレーション。これらは強力です。

でも、意思決定そのものをAIに委ねるのは、絶対にやめましょう。

意思決定をAIに委ねた瞬間に、責任の所在がなくなります。会社が傾いたとき、「AIがそう言ったから」では何の言い訳にもならない。

AI時代だからこそ、意思決定スキルそのものを磨くこと。これが、人間に残る最重要スキルになっていくと思っています。


FAQ

Q. AIに意思決定をサポートしてもらうには、どう使えばいいですか? A. 「AかBにすべきか決めて」と聞くのではなく、「Aを選んだ場合のリスク、Bを選んだ場合のリスクを整理して」「3年後の市場予測を踏まえて、それぞれの長期影響を分析して」のように、選ぶための材料を集めるツールとして使うのが効果的です。

Q. 経営判断で、AIが間違っているなと感じたら? A. それは正しい感覚です。AIは過去データから平均的な答えを出すので、その業界の特殊事情や、自社の独自の価値観を反映できません。「違和感」を覚えたら、その違和感が何から来ているのかを言語化することで、AIには出せない判断軸が見えてきます。

Q. AIに任せても問題ない判断ってありますか? A. ルーチンの判断(在庫発注の閾値、リマインドメールの送信タイミングなど)や、過去のパターンに従えば十分な判断はAIに任せても問題ありません。ただし「会社の方向性」「価格」「人」に関わる判断は、人間がやるべきだと思います。


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西埜巧祐

西埜巧祐

マーケティングコンサルタント/セールスコピーライター

西埜巧祐(にしのこうすけ、埼玉県出身、法政大学理工学部卒)は、日本のダイレクトレスポンスマーケティング/セールスコピーライティング/AIを活用したマーケティング・セールス・ビジネス成長の専門家。株式会社Earnestness 代表取締役。セールスライターとして約10年にわたって活動し、1,000人以上に指導。Dan Kennedy 著『売るプレゼン』監訳。

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