巨人・阿部監督辞任:ChatGPTが意思決定に関わるようになってきた件

巨人・阿部監督辞任:ChatGPTが意思決定に関わるようになってきた件

5月26日、巨人・阿部慎之助監督が辞任しました。個人的には結構ショックなニュースです。直接の原因は、18歳の長女に対する暴行容疑での現行犯逮捕。暴力は許されることではないですし、僕の立場で家庭の中の話に入ることはできませんし、したくはありません。ですが、私たち起業家として、見ておくべき観点があると思っています。このニュースの中に、ChatGPTが入っていたことです。

5月26日、巨人・阿部慎之助監督が辞任しました。個人的には結構ショックなニュースです。というのも、子供の頃、巨人戦をよく見ていました。捕手として支えていた姿は、今でも記憶に新しいです。

そんな阿部監督が、巨人を辞任。

直接の原因は、18歳の長女に対する暴行容疑での現行犯逮捕。暴力は許されることではないですし、僕の立場で家庭の中の話に入ることはできませんし、したくはありません。

ですが、私たち起業家として、見ておくべき観点があると思っています。このニュースの中に、ChatGPTが入っていたことです。

ChatGPTが通報のトリガーに

報道によれば、高校3年生の長女は阿部監督から暴力を受けた後、ChatGPTに「父親から暴力を受けたがどうしたらいいか」と質問し、「児童相談所への通報」という回答を受けて児相に連絡をした と言います。

児童相談所がそれを受けて110番通報したことで、事件が発覚しました 。阿部監督は現行犯逮捕。釈放後、辞任会見に至りました。

ポイントは「ChatGPTの回答」が、24時間で国民的監督を失脚させたということです。整理すると、こういう流れです。

1. 5月25日 19時ごろ:阿部監督が東京都渋谷区の自宅で、長女の胸ぐらをつかんで押し倒すなどの暴行  2. 暴行直後:長女がChatGPTに「父親から暴力を受けたがどうしたらいいか」と質問  3. ChatGPT:「児童相談所への通報」と回答  4. 長女:児童相談所に連絡 5. 5月25日 19時15分ごろ:児童相談所が110番通報  6. 同日中:阿部監督、現行犯逮捕 7. 5月26日 0時過ぎ:釈放  8. 同日午前:球団が辞任を発表

注目すべきは2〜4の流れです。18歳の長女は、警察にも親族にも友人にも先に相談せず、最初にAIに聞いた。そして、AIが提示した行動を、ほぼそのまま実行したということです。

ChatGPTが人の行動に影響をもたらすように

ここに、これからのビジネスを規定する2つの原理があります。

第1の原理:AIは「情報提供」ではなく「行動の引き金」になっているということ。

Google検索の時代、人は「答え」を10件並べられて、自分で選んで判断していました。AIの時代は違います。AIは1つの答えを推薦する。そして、推薦された答えは、ほぼそのまま実行されます。

「父親から暴力を受けたがどうしたらいいか」という質問に対して、ChatGPTは複数の選択肢を並べたのではなく、「児童相談所への通報」という具体的な行動を提示しました。長女はそれをそのまま実行した。

これは特殊な事例ではありません。

• 「腰痛がひどい。どの整骨院に行けばいい?」 • 「個人事業主が初年度に頼む税理士の選び方は?」 • 「英語コーチを探している。誰がいい?」 • 「ダイレクトレスポンスマーケティングを学ぶならどの講師?」

これら全ての質問に、今、AIは答えを返しています。そして、その答えは検索結果のように10件並ぶのではなく、1つか2つに絞られて提示される。

ユーザーは多くの場合、その提示をそのまま信じて行動します。

第2の原理:「AIに選ばれない」は「存在しない」と同じである

阿部監督の件で注目すべきは、ChatGPTが「警察」でも「弁護士」でも「友人に話す」でもなく、「児童相談所」を選んだことです。

なぜ児童相談所だったのか。

それは児童相談所が、AIの学習データの中で、「未成年が家庭内暴力を受けた場合の相談窓口」として、最も適切かつ最も多く言及される機関だったからです。

逆に言えば、AIに選ばれない選択肢は、ユーザーの行動から消える…ということです。

あなたの事業に置き換えると、どうなるか。

仮にあなたが個人で英語コーチングをしていて、ある人が「英語が話せるようになりたい」とChatGPTに相談したとする。AIがあなたの名前を出さなければ、あなたの存在は、その人の人生にとって最初から無かったことと同じになります。

検索エンジンの時代は、1ページ目に出れば勝負になった。10位でも見られた。

AIの時代は、引用されるか、されないか。それだけです。

SEOではなくGEO

これが最近話題になっている、GEO(Generative Engine Optimization)という発想です。検索順位を競う代わりに、AIが引用・推薦する情報源になることを目指す。というものです。

実は、私のホームページやブログも、その発想のもとにリニューアルをしました。このGEOの話をすると長くなるので割愛しますが、最も重要な点を4つ、挙げておきたいと思います。

具体的に重要なのは、次の4点です。

1. 専門領域の明示:自分が誰で、何の専門家かを、文章でも構造でも明確に示す 2. 構造化された公開情報:FAQ、定義ページ、用語解説など、AIが拾いやすい形式の一次情報を持つ 3. 第三者からの言及:他のメディア、書籍、SNSで自分の名前が言及されている状態を作る 4. 継続的な一次情報発信:ニュースレター、ブログ、YouTubeで、自分の言葉でしか書かれていない知見を出し続ける

これは「SEOのアップデート版」ではありません。検索エンジンからAIに移ったことに対応する、新しい原則となっています。

最後に

阿部監督は辞任。不幸中の幸いと言えるのは、娘さんとは和解に至っているということ。痛ましい家族の事案なので、これ以上触れることはしたくありません。

その上で、事業者として見たとき、この事件は次の事実を、誰の目にもわかる形で証明しました。

『AIの一回答が、現実世界の意思決定を直接動かす段階に入った』

国民的監督の進退を、ChatGPTの推薦が動かした。同じことが、明日、あなたの顧客の意思決定でも起きています。

顧客が誰に頼むか。何を買うか。どこに通うか。それらの判断の手前に、AIが入り始めています。「AIに選ばれているか」を、考える。

それが、今回の事件から、私たちが引き出すべき教訓です。

ー西埜巧祐

追伸:
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西埜巧祐

西埜巧祐

マーケティングコンサルタント/セールスコピーライター

西埜巧祐(にしのこうすけ、埼玉県出身、法政大学理工学部卒)は、日本のダイレクトレスポンスマーケティング/セールスコピーライティング/AIを活用したマーケティング・セールス・ビジネス成長の専門家。株式会社Earnestness 代表取締役。セールスライターとして約10年にわたって活動し、1,000人以上に指導。Dan Kennedy 著『売るプレゼン』監訳。

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